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家族信託で後悔しないために知っておきたい失敗事例と対策

「家族信託」と検索すると「後悔」という関連ワードが表示されることが多く、不安に感じる方も少なくありません。実際に、制度を十分に理解しないまま契約してしまったり、準備不足のまま進めたりすると、「思っていたのと違った」「家族関係が悪化した」といった後悔につながるケースがあるのも事実です。


しかし、これらの後悔は、事前に注意点を押さえておけば防ぐことが可能です。正しく制度を理解し、自分たちの状況に合わせて設計することで、家族信託は有効な財産管理の手段になり得ます。


本記事では、よくある家族信託の後悔・失敗事例をご紹介し、その原因と対策について解説します。

よくある家族信託の後悔・失敗事例

ここでは、家族信託における後悔や失敗事例を、以下の3つに分類して紹介します。

  • 財産の範囲に関する後悔
  • 契約設計・精度理解に関する後悔
  • 家族間トラブルに関する後悔

具体的な失敗パターンを知ることで、同じような後悔を避けることができるでしょう。

財産の範囲に関する後悔

家族信託において特に重要なのが、信託する財産の選定です。財産の種類によっては信託できなかったり、信託可能であっても管理方法が異なったりします。事前の確認を怠ると、申請が受理されない、財産管理が複雑になる、想定していた効果が得られないといった問題が発生する可能性があります。

家族信託できない財産を対象にしてしまった

財産の中には家族信託の対象にできないものがありますが、これを信託財産として設定してしまう失敗事例が少なくありません


家族信託できない財産の代表例として、「農地」「預貯金口座」(口座そのものの信託はできませんが、預貯金自体は信託可能)「年金受給権」などが挙げられます。これらを対象に含めてしまうと、契約自体が無効になったり、手続きが大幅に遅れたりする原因となってしまいます。そのため、申請をする前に家族信託の対象となる財産が受理されるものであるかを十分に確認してください。

逆に、家族信託ができる財産の申請を忘れてしまう失敗例もあります。対象財産の洗い出しは慎重に行いましょう。

認知症発症によって家族信託ができなかった

家族信託を検討している最中に委託者が認知症を発症してしまうと、判断能力が著しく低下したとみなされ、委託者の口座が凍結される可能性があります。口座が凍結されると預金の引き出しや他の口座への振り替えができなくなるため、財産管理が困難になる恐れがあります。このような事態を避けるためには、なるべく早く信託の手続きを行い、安定した管理・運用体制を整えなくてはなりません。

信託口口座が開設できなかった

信託財産の中に現金がある場合、通常は信託財産専用の口座である信託口口座を開設して管理することになります。信託口口座の開設は法的義務ではないものの、効率的な財産管理やトラブル回避には非常に有効な手段です。


ただし、信託契約書の公正証書化や金融機関によるチェックが必要になるため、スムーズに開設できないケースも少なくありません。信託口口座を開設できないと、委託者と受託者の資産が混在し、使途が不明確になりやすく、後々「受託者が私的に使ったのでは?」といったトラブルに発展するリスクが高まります

契約設計・制度理解に関する後悔

家族信託は複雑な制度であり、契約内容の設計や制度の理解が不十分だと、期待した効果が得られない場合があります。なかでも、税務面での誤解や類似制度との比較検討不足、契約期間に関する理解不足などは、後悔につながる主要な要因となっています。専門知識なしに進めることのリスクを理解し、適切な準備を行うことが重要です。

信託契約書の内容が不十分であった

専門家に相談せず、自分だけで家族信託契約書を作成すると、重要な条項の抜け漏れが発生することがあります。家族信託は実施する人の現状によって記載する内容も大きく異なるため、個人の判断だけで契約書を作成するのは非常にリスクが高いといえるでしょう。


不備のある契約書では、法的な有効性や妥当性がないと判断され受理されない可能性があります。受理されたとしても、契約内容が家族の状況に適しておらず、将来的にトラブルが発生するといった恐れがあります。

家族信託の手続き|流れや注意点をわかりやすく解説

税金対策になると期待して契約したが効果が得られなかった

「節税につながる」と期待して家族信託を契約したものの、期待した効果が得られなかったという後悔があります。


家族信託そのものは直接的な節税制度ではなく、契約内容や受益者の関係によって課される税金の種類や額が変わるという性質のものだと理解しておく必要があるでしょう。例えば、委託者と受益者が同一人物ではない場合、贈与税が課される可能性があります。また、信託する財産が不動産の場合、不動産所得の増加によって相続税額が大きくなる可能性もあります。一方で、適切に設計すれば相続手続きの簡略化や将来のトラブル回避に役立ち、結果として税務リスクを抑えることが可能です。

税金対策を目的にする場合は必ず専門家に相談し、自分の家庭に合った制度設計を行ってください。

制度の理解不足により最適な選択ができなかった

家族信託は、あらゆるケースで最適解となる手法ではありません。家庭の状況に合っていないにもかかわらず家族信託を契約してしまうと、後悔につながりやすいでしょう。


家族信託に似た制度に「成年後見制度」があります。これは、病気などで判断能力が低下した人の法律行為を専門家がサポートする仕組みです。家族信託と異なり、裁判所の審判があれば、委託者が契約前に認知症を患っていても利用できるという特徴があります。

各制度の特徴を事前に理解し、自分の状況に合ったものを選ぶことが重要です。

30年ルール・1年ルールによって家族信託が終了してしまった

家族信託には「30年ルール」「1年ルール」という規定があります。


「30年ルール」は信託契約が行われてから30年が経過した後、新たに受益権を得た者が亡くなると家族信託が終了されるという規定です。一方「1年ルール」は受託者と受益者が同じである状態か、受託者不在の状態が1年間継続すると自動的に信託終了となる規定を指します。

これらを理解して家族信託を行わないと、いつの間にか契約が終了しており、財産管理がしにくくなるといったトラブルが起きる可能性があります

不動産のローンを一括返済することになった

住宅ローンが残っている不動産を信託財産に組み入れる場合は注意が必要です。金融機関の承諾を得られないまま信託を行うと、設定されている抵当権が実行され、ローンの一括返済を求められるケースがあります。そのため信託を行う際は融資元の銀行に相談して、承諾を得ることが必要です。

予想以上に費用がかかり負担になってしまった

家族信託は、契約書作成や公正証書の作成にかかる費用、専門家への相談料などが必要です。さらに、信託財産が不動産である場合は、登録免許税や不動産取得税、司法書士報酬などが追加でかかります。


こうした費用を事前に把握せずに契約を進めると、「思った以上にお金がかかった」と後悔する可能性があります。事前に見積もりを取り、複数の専門家に相談することで、トータルで必要な費用を把握しておくことが大切です。

家族信託はどこに頼むべき?依頼できる専門家や選ぶ際のポイントを解説

家族間トラブルに関する後悔

家族信託は家族間の財産管理に関わる制度です。そのため、役割分担の不明確さや、受託者への負担集中に代表される関係者間の不公平感などが、深刻なトラブルに発展することがあります。こうしたトラブルを防ぐには、十分なコミュニケーションと入念な制度設計が欠かせません。

受託者に過大な負担がかかり、家族関係が悪化した

受託者になると、財産の管理・処分権限が与えられる一方、関係者間の不平等を避けるための責任ある行動が求められます。また、契約内容に基づいて財産を管理し、記録や報告書を作成・提出する義務も生じます。加えて、委託者のサポートを行う場合も少なくありません。


このように大きすぎる負担を強いられると、受託者がストレスから財産管理を放棄してしまう恐れがあります。こうしたトラブルを防ぐには、委託者と受託者だけで契約を進めるのではなく、関係者全員で情報を共有し、役割を理解したうえで受託者を選ぶことが重要です。

受託者が不正に財産を使い込み、トラブルになった

受託者が不正に財産を使い込んでいたという事例も発生しています。財産に関する権限が集中し、なおかつ日常的に財産を管理する受託者は、不正やトラブルを起こしやすい立場ともいえます


不正やトラブルを防ぐには、受託者を監督する信託監督人を置く方法があります。これにより委託者が高齢で受託者の監督ができない場合でもチェックができたり、受託者による不正行為の差し止めが可能です。また、信託管理人は業務負担の大きい受託者の相談役としての役割も果たします。

契約に際して十分な話し合いが無く、不公平感が残った

関係する親族に十分な説明がないまま家族信託の契約を行ってしまうと、後に不公平感が残ることがあります。契約前に関係者それぞれの希望を聞き、委託者・受託者・受益者をはっきりさせることで、トラブルを未然に防ぎやすくなるでしょう。また、再婚・介護・相続人の死亡などによって、事前に定めた契約内容と実情が噛み合わなくなる場合もあります。専門家の監修の元で計画を立てることで異例の事態にも対応しやすくなります。

家族信託終了時に遺留分侵害額の請求を受けた

遺留分とは、法定相続人に最低限保証された相続財産のことです。家族信託後に契約に従って、委託者から受託者に財産の相続をしようとした際、受託者以外の法定相続人から「遺留分を侵害されている」と訴訟されたケースがあります。そのため契約をする前に遺留分の侵害をしないように財産の承継先を設定しておき、関係者の合意を得ることでトラブルを未然に防ぎましょう。

家族信託で後悔しないためのポイント

ここまでに紹介した失敗事例を踏まえて、家族信託で後悔しないためのポイントを4つ紹介します。

  • 信託に含める財産をしっかり整理する
  • 税金や相続の枠組みを事前に確認する
  • 関係者全員で合意形成をしてから契約する
  • 家族信託と他制度を比較検討する

一つずつ見ていきましょう。

信託に含める財産をしっかり整理する

財産の中には家族信託ができないものもあり、信託できる財産でも種類によって管理の方法が大きく異なります。そのため、家族信託を行う前に、管理する財産について情報を整理することが重要です。不動産はローンや固定資産税などの維持費も確認しておきましょう。預貯金は信託口口座への切り替えが必要になるため、利用中の自動引き落としやカード決済の扱いも事前に洗い出しておくことが大切です。

税金や相続の仕組みを事前に確認する

家族信託そのものは節税制度ではありません。契約の内容によっては贈与税・相続税・所得税が発生することもあります。そのため、家族信託の仕組みや注意点を十分に把握したうえで検討しましょう

関係者全員で合意形成をしてから契約する

家族信託を検討する場合は、委託者が心身ともに健康で、判断能力も十分にあるうちから、関係者全員で話し合いましょう。関係者全員に概要を共有し、それぞれの希望や管理方法を汲み取りながら委託者・受託者・受益者を決めることで、不公平感を残さずに進めることができます。

家族信託と他制度と比較検討する

先述したように財産管理を行う方法は家族信託だけではありません。「成年後見制度」「遺言書」といった方法もあります。慎重に検討し、管理する財産の種類に適した方法を選びましょう

  • 家族信託:柔軟性が高い一方、設計や運用が複雑
  • 成年後見:裁判所が関与するため安心感がある反面、自由度は低め
  • 遺言書:死後の財産分配に有効だが、生前の管理には使えない

また、目的に応じて複数の方法を組み合わせることで、より安心できる設計になる可能性があります。

家族信託での後悔を避けるには専門家のサポートが心強い

家族信託は複雑な制度であり、適切な設計と運用には専門的な知識が不可欠です。専門家のサポートを受けることで、契約書の不備や想定不足を防ぎ、家族の状況に適した制度設計が可能になります。

契約書の不備や想定不足を防げる

契約書の作成には専門的な知識が必要です。自分で作成すると不備が発生し、受理されなかったり、受理されても制度を十分に活かせず余計な費用がかかってしまう可能性があります。専門家に依頼すれば、スムーズに作成してもらえるため、家族信託の申請にかかる手間を大幅に省略することができるでしょう

家族の状況に合った最適な制度設計ができる

家族信託における後悔をなくすには、関係者の不公平さをできるだけ無くすことが重要です。専門家に相談すれば、家族の実態や財産の種類、関係者の希望を踏まえたうえで、契約が最適な形になるようにサポートしてもらえるため、契約後に齟齬が発生しにくくなるでしょう

また、アフターフォローの充実している依頼先では、家族信託の内容の調整や法律の変更による対応も相談しやすいため、長期的にトラブルを回避することにつながります。

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家族信託は正しい準備で「後悔しない制度」になる

家族信託は便利な制度ですが、誤解や準備不足で後悔する人もいるのが現実です。後悔を避けるには、事例から学び、制度の限界を理解して準備することが大切です。


専門家に相談すれば、自分の家庭に合った最適な設計が可能になります。さくらリーガルパートナーでは、家族信託の手続きを行っています。「後悔しない家族信託」を実現するために、まずはお気軽にご相談ください。

さくらリーガルパートナーでは、家族信託に関するご相談を承っております。

家族信託に関するお悩みはさくらリーガルパートナーまでお問い合わせください。


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